その車には小さな男の子が乗っていました。男の子は車のみすを肩にかついで、たいくつそうにきょろきょろ外のけしきをながめていました。
すると若者が木の枝の先にぶんぶんいうものをつけて持って来るのを見て、ほしくなりました。そこで男の子は、「あれをおくれよ。あれをおくれよ。」 と、馬に乗ってお供についている侍にいいました。侍は若者に向かって、
「若さまがそのぶんぶんいうものをほしいとおっしゃるから、気の毒だがさし上げてくれないか。」と頼みました。若者は、「これはせっかく仏さまからいただいたものですが、そんなにほしいとおっしゃるなら、お上げ申しましょう。」といって、すなおにあぶのついた枝を渡しました。車の中の女の人はそれを見て、
「まあ、それはお気の毒ですね。ではその代わりに、これを上げましょう。のどがかわいたでしょう、お上がりといって、上げておくれ。」といって、大きな、いいにおいのするみかんを三つ、りっぱな紙にのせて、お供の侍に渡しました。若者はそれをもらって、
「おやおや、一本のわらが大きなみかん三つになった。」とよろこびながら、それを木の枝にむすびつけて、肩にかついでいきました。
・・・さて、お話はこの後どうなるのでしょう?
語り:花本弘子 音楽&効果音:ひぐま イラスト:Mackey
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