「おじさん。押してやろうか?」
その中の一人、――縞のシャツを着ている男は、俯向きにトロッコを押したまま、
思った通り快い返事をした。
「おお、押してくよう」
良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。
「われはなかなか力があるな」
他の一人、――耳に巻煙草を挟んだ男も、こう良平を褒めてくれた。
その内に線路の勾配は、だんだん楽になり始めた。
「もう押さなくとも好い」――良平は今にも云われるかと内心気がかりでならなかった。
が、若い二人の土工は、前よりも腰を起したぎり、黙黙と車を押し続けていた。
良平はとうとうこらえ切れずに、おずおずこんな事を尋ねて見た。
「何時までも押していていい?」
「いいとも」
二人は同時に返事をした。良平は「優しい人たちだ」と思った。
・・・さて、お話はこの後どうなるのでしょう?
語り:花本弘子 音楽&効果音:ひぐま イラスト:Mackey
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