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一般リスナーの龍野修司さんの作品「貴船の昼弁当」が
中学校の道徳資料として採用されました。
今回は、その指導資料をすべて公開していきます。
(ひぐま)
どもっす!hanaす~!
さぁさ。みなさま。今週もお聴きくださいましたか~?
第41回放送は!貝塚市立中央幼稚園・覚野園長先生のお声と園児たちによる園歌斉唱。
あんど 「コトバの玉手箱プレゼンツ」、
道徳授業の教材として取り上げられている
「たっちゃん(龍野修司さん)の『貴船の昼弁当』」特集です。
まずは Bunbunが近頃飛び回らせて頂いている、大阪府貝塚市の幼稚園&保育園。
貝塚市立中央幼稚園の、覚野園長先生からの園紹介のお声です!
おお。優しくやわらかく、丁寧な園長の声。Bunbunも改めてうっとり聴いています。
子供達に伝わるよう、細心の心配りが散りばめられた話しぶりに、Hanaもうっとり。
さすがだにゃぁ。。。。。。。
そして! 園児たちによる、園歌斉唱!ちょっこり間違える場面もあったそうですが、
みんなの元気な歌声が、ONLINEで全世界に流れましたよ!!!
お次は「たっちゃんシリーズ第2弾!」と称して、
龍野修司さん作「貴船の昼弁当」「貴船の昼弁当…の続き」2作を一挙連続公開!!
当番組プロデューサー、ひぐまセンセイの解説付きという超豪華版!なのよ。
ところで、貴船の昼弁当 ってなんのこと???と言う方のために!前説です。
「貴船の昼弁当2連作」は、
たっちゃん こと 龍野修司さんのオリジナル朗読作品です。
第33回放送でONAIRさせていただきました。
龍野さんは 「コトバの玉手箱」に触発され、自身の書いた原稿を、一生懸命朗読練習を重ね収録。
自分の作品に、コトバの玉手箱 同様のBGM&効果音が付くといいな。。。
と考え、サウンドプロデューサーひぐませんせに打診、
「20年前の恩を返すためにこのCDを作りたい」というたっちゃんの想いに感銘したひぐまPが
思いつくままの効果音を乗せていった結果・・・・
たっちゃんもオドロキ!の仕上がりとなり、
当番組でONAIRの際にはスタッフもリスナーもがっつり聴き込んでおりました。
ところが! 内容が秀逸で、聴く人を虜にする作品がゆえ、
これはONAIRだけでは不完全燃焼でしょう!!と、あれよあれよという間に
中学校の道徳教育教材として採用され、
中学生のみんなが 「たっちゃんの心境について真剣に考える」という時間ができてしまいました!
○今回使用した道徳授業の資料(資料1、2音源、資料3ワークシート、資料4、5原文)
資料1
資料2
Cppyright(C)2010_Shuji Tatsuno and Hitoshi Yamaguchi. All Rights Reserved
資料3
●指導項目2-(2)思いやり、2-(4)感謝
貴船の昼弁当
学習日__月__日 __年__組__班 氏名____________
【資料を聞く前に】
1,あなたは今までに「誰かに助けられた」という経験がありますか。またそれはどんな経験ですか。
【資料を聞いた後で】
2,龍野さんが、財布の中身をオネエサンに見せたとき、彼はどんな気持ちだったのだろう。
3,お店のオネエサンは、どうして龍野さんを助けたのだろう。
4,20年経って、龍野さんはこの文章を書きました。龍野さんは、この後、どのような行動を起こすと思いますか。
【「貴船の昼弁当・・・の続き」を聞いて】
5,龍野さんは、この事を通してどのようなことに気がついたのだろう。
6,龍野さんに、短い手紙(または感想)を書いてみよう。
番組では 道徳授業の担当でもある ひぐまPが解説役として登場。
Bunbun&Hana、道徳授業で実際に使われたのと同じ発問に あえぎあえぎです。
年をとってしまうとアタマも固くなるんですね。なかなか、発問に答えられません。。
発問1
あなたは、これまで 誰かに助けてもらった経験 はありますか? どこで?どんなふうに?
「・・・・・・・・・。」
ソノ時 は感謝イッパイで「覚えておこう」とするものなのですが、
このタイミングで訊かれると、なかなか思い出せない。。。あれ???
にっこり笑うひぐまセンセイ。
「じゃぁ、聴いてみましょう」とたっちゃんのCD。
「貴船の昼弁当」が流れます。
改めて聞き入るBunbun&Hana。
発問1をほったらかしにしたまま、発問2 に突入。
発問2:龍野さんは、財布の中をお姉さんに見せた時、
どんな気持ちだったのでしょう??
うにゃうにゃとてんで勝手に想像する、B&H。
微笑むひぐまPの声で生徒みなさんの意見がピックアップで紹介されます。
おお。なるほりょ。ずこん!とまっすぐな意見が出てきます。
発問3。
お店のお姉さん は、どうして龍野さんを助けたのでしょう?
またも うにゃうにゃ 発言するB&H。
生徒皆さんの意見を聞いて、「!」にございます。
みんな、龍野さん や、 お姉さん の キモチ、
めちゃ考察してるやん!!!!しかも 深い やん!!!
おどろきです。
そんなこんなのうちに
「貴船の昼弁当・・・の続き。」がONLINE初登場!
この2作目は、1作目に続いての作品ですが、
龍野さんが貴船に出向きお姉さん(?)と再会した後のお話。
これが!おもろすぎ~~~!!
効果音もたっちゃんのキモチをばっちり支え、ハジケテます。
大笑いしながら聴き終ると
間髪いれずに発問4。
発問4
貴船での出来事から20年後に龍野さんはこの物語を執筆しました。
彼はその後、どんな行動を起こすと思いますか?
hana、たっちゃんから聞いてるもんね。 これは知ってるよ!
発問5
この出来事を通して龍野さんはどんなことに気づいたでしょう?
答えを探すB&H。今回は質問攻めで大変よぉ!!
道徳の授業 って、人の心、相手の気持ちをどんどん深く探っていくうちに
知らず知らずのうちに自分を探っているんだねぇ。。。。
Hana、自分を振り返るいいきっかけをもらいました。
「なにか」が ないと、なかなか 振り返り ってできないです。
たっちゃん。ありがとね。。。。
ってことで、たっちゃんの更なる展開に乞うご期待!なのですよっ!
たっちゃんて誰? 貴船の昼弁当ってなに??
道徳授業の教材になるストーリーって???
気になる人はMP3でチェックチェック!!!!!!!
★今日のなぞなぞ
学校の勉強の中で解くのが難しい教科はなぁんだ???
答は 「どう解く?」=道徳
でございやしたぁぁぁぁぁ! 判ったかな?
んんではまた来週なのよ。来週もムフフの展開よん!絶対聴いてねっ!!!
資料4
「貴船の昼弁当」 龍野修司
バブル全盛期の平成の始まりごろ、ぼくは奨学金で学ぶ学生で、
実家を離れ、京都に一人住んでおりました。
あるとき、高校の後輩のユキちゃん(仮名)という女の子が大阪から遊びに来ました。
彼女ではないのですが、わりと親しくしていた可愛い子です。
休みの日に先輩であるぼくを慕って遊びに来てくれたのです。
京都らしいところを案内してあげようと思って、
叡山電車に乗って鞍馬・貴船方面に行きました。
このあたりは大学のクラブの練習でよく走っていたので地理には詳しかったのです。
貴船神社などを散策していてお昼になりました。
着物を着たオネエサンがお店の前で呼び込みをしていました。
「お昼弁当いかがどすえー」
ぼくはユキちゃんに
「お昼食べよか?」
といってそのお店に入りました。
通されたのは川の流れる音が涼しげに聞こえる、広い畳の部屋です。
ガラスの障子から若葉がそよぐのがよくみえます。
やたら広いのに他に客は二組くらいしかおりませんでした。
裕福そうな年配のご夫婦と、ぼくの勝手な想像ですが不倫関係の成金のペア。
そしてテーブルの上にはメニューがありませんでした。
一抹の不安を感じまして、ユキちゃんがお手洗いに行ってる間にお店の人にききました。
「あのーメニューは…?」
「お昼弁当しかおまへんのどすえー」
「えー、それはおいくらぐらいなのでしょうか?」
「おひとりさま8000円になりますえー」
地理には詳しくとも京都の料亭事情には詳しくなかったぼく。
「お昼弁当」ときいてイメージできたのは、元祖かまど屋の「から揚げ弁当」、
リッチなところで「幕ノ内弁当」。ちなみにふだん食していたのはノリ弁当でした。
暑くもないのにつつつと首筋に汗が流れました。
「うどんとかおまへんか?」
「おまへん」
しかし、ぼくに憧れてやってきた後輩女子の手前、いまさらカッコ悪い事は出来ません。
一世一代の大ピンチです。ユキちゃんが戻ってくるまでに何とかしなければなりません。
僕はお店のオネエサンに正直に告白しました。
お金はないけど女の子の前なのでエエカッコしたい、と。
「学生さんどすか~?」
「京都○○大学です。」
「そうどすかー。ご予算どのくらいまででしたらよろしおすかー?」
「えー、こんなけしかありませんねん。」
ぼくは財布を開けて中身をオネエサンに見せました。
おそらく一人分にも足りないくらいしか入ってなかったと思います。
ぼくがお店の人なら「おとといおこしやす」と言っておっぱらったことでしょう。
ところがオネエサンは、
「よろしおす。」
「え?」
「あ、おつれさんおもどりどすさかい、なんもいわんとまかせといておくれやす。」
そしてなにも知らず戻ってきたユキちゃん。
なにごともなく場なれたふりを装いながらキャンパスライフなどのお話をするぼく。
しかし頭の中では
「うどん、でてくるんちゃうか?」とか
「かまどやの幕ノ内弁当、買いに行ってるんちゃうか?」
などと、アホなことを考えておるわけです。
しばらくして、しずしずと「お昼弁当」が運ばれてきました。
大きめのお皿にちょこっと乗ったお豆腐とか、泳いでいるような鮎の塩焼きなど、
細かい料理が次々とやってくるのです。
京都に来てはじめて目の当たりにする京料理。
なんとも繊細で手の込んだ、それはそれはもう学生の口にするような代物ではありません。
いくら料理に疎いぼくでも、かまどや弁当のどのメニューよりもお高いことはわかります。
「まかせとくれやす」とは言ってくれましたが、心配になってきました。
カードなんか持ってへんし、親の連絡先教えろとかいわれへんかなあとか考えておりました。
しかし、貴船川はさらさら流れ、お天気もいいし、なんだかゆったりしてきました。
もうどうにでもなれという気分になってきた僕は素直に京料理を楽しむことにしました。
目の前にいるユキちゃんに、楽しんでいるかなあと、気遣う余裕も出てきました。
分不相応ながらも楽しい時間を過ごせたのでした。
さて食事も終わり、いよいよお勘定です。
ドキドキしながら伝票を見ました。
オネエサンに示されたお勘定は僕が白状したわずかな金額にもいってませんでした。
「え?」という気分です。
「おおきに~、またお越しやす~。」
と玄関で送り出してくれるオネエサン。
不思議な気分でふりむくとオネエサンはにっこりわらって、
ユキちゃんには聞こえないくらいの声で
「出世しはったら、またおこしやす」
とぼくにささやいたのでした。
あれから20年。真実を知らないままのユキちゃんは、
もう結婚して東京のほうで暮らしているようです。
しかし、ぼくときたら、いまだ出世払いに行けておらず、
オネエサンには申し訳なく思っているのでした。
資料5
「貴船の昼弁当」…の続き 龍野修司
貴船のお店で「出世しはったらまたおこしやす。」といわれてから20年がたち、
僕は出世して社長になりました。
社長がいつまでも独身ではイカンと周りの声があり、お見合いをしました。
そして、いい感じの人だったのでデートに誘いました。
小雨模様の日曜日、ちょっと遠出の京都です。
例の昼弁当の話をしながら、貴船に向かいました。
「お店がまだあったら行ってみたいなと思うんですよ。」
「素敵なお話ですね。一緒に探しましょう!」
ええ人やなあ~。
鞍馬寺から山道を歩いて貴船に向かう20年前と同じコースです。
当時の僕には散歩道程度でしたが、40歳の今となってはけっこうな登山道です。
「大丈夫ですか? 休憩しましょか?」と僕。
「大丈夫ですよ~。」と答える7つ年下の彼女。
休憩したいのは僕なんやあ…
息切れし、足がガクガクし始めたころようやく貴船川のせせらぎの音が聞こえてきました。
お昼もとうに過ぎてお腹も減っております。
思い出のお店を探そうという気も失せてましてとりあえずお昼を食べることにしました。
最初のお店は、お昼のコース1万3千円と店先にお品書きがありました。
おお、さすが貴船…。感心していると年配のお姐さんが声をかけてくれました。
「この先にもお店はありますえ~。」
値段に恐れおののいているのを悟られたようです。
次のお店は、3500円から。おお。ここにしましょう。
「ちょっと小雨ですけど、せっかくですから川床にどうぞ~。
本降りになりましたらお部屋にご案内いたします~。」
と着物を着た若いお姉さんが案内してくれました。
貴船の川床は、水面すれすれの高さにあって、
足を放り出せば川の流れにひたすことができます。
頭上に青々と茂る若葉は、しっとりとぬれていて、
雨のしずくが ぽた、ぽた と落ちてきます。
ひんやりした空気が川の流れに運ばれて、ひゃーっと通り過ぎ、
汗がひき、疲れがとれていきます。
お料理は3,500円からですが鮎の塩焼きが付いて5000円。
その上は7500円1万円とどんどんあります。5000円コースにしました。小市民です。
写真付きのメニューで明朗会計。安心です。
ところでこのお姉さん、どうも心に引っかかります。
ぼくは、お部屋も見たくなり、上にあがってみました。
お店の玄関先には赤いじゅうたん、奥に畳のお部屋。
そして、ガラス障子から歪んで見える景色は赤い灯篭の列。
昔のガラスは厚みが均一じゃなくて向こうが歪んで見えるのですね。
ああ~、20年前もこんな感じやったなあ!
お料理を運んできたオネエサンに話をしてみました。
「それでしたらきっとうちですわ。うちのつくりはほかのお店とは違ってるんですよ。」
「でもメニューがなかったんですよね。」
「ええ、以前はメニューはおまへんでした。
写真を載せたりするようになったのも最近なんですえ~。」
お金がなかった学生の僕がどうなったのかオネエサンも興味津津で聴いてくれました。
「それでね、ぼくが恥をかかんように助けてくれたんですよ。」
「そうどすか~。ようまた、彼女さんとおふたりで来ていただきまして~。」
「いや、この彼女とはちゃいますねんけど。」
「あら。そうどすか。ああ、20年前でしたら女将が覚えてるかも知れませんわ。きいてみます。」
小さなお豆腐に踊るような鮎の塩焼き。20年前と同じ貴船の昼弁当です。
しかし、20年前のほうが品数が多かった様に思います。考えてみるとあのときのお料理は本来8000円、今日のは5000円。支払いが足りないとわかっているのにかかわらず、本来のコースのまま出してくれていたんですねえ。
今回は心よりゆったりと料理を堪能しました。
お勘定をしにいくと白髪のえらいおばあちゃんが出てこられました。
あれ、この人が女将? 20年経ったら変わるもんやなあ、と思っていたら、
「こちらは大女将です。女将はこちらですえ~」
でてこられた女将さんは、にこやかな笑顔がオネエサンそっくりでした。
女将さんは遠い眼をしていいました。
「そんなこともありましたですかねえ…」
「その節は特別なお計らいをいただきまして…。」
「いえいえ、ちょいちょいそんな人いてはりましてね。
たいがい、お帰りになってから書留ででも送ってくださいゆうてましたんやけどなあ。」
ええっ、衝撃の事実? 書留とは初耳。
しかし女将さんは笑って言いました。
「まあ、そんなこともおましたんでしょうねえ。ようお越しくださいました。」
僕が出世してふたたび訪れたことを大変よろこんでくれまして、
彼女と記念写真を撮ってもらいました。
お金を送ってくる保証などないお客、
ましてや出世する保証などさらにない若造でさえも心からもてなして、
20年後の再来を喜んでくれるのです。
経営者として経験の浅い僕は商売の奥深さをあらためて感じたのでした。
そのあとは縁結びで有名な貴船神社をお参りして、結婚してまた来れますようにと願いました。
そういえば20年前、ユキちゃんともこの神社にお参りしたんやった、と思い出したのですが、それは口に出さないでいたのでした。